コピー品のブレンボ カニキャリパーの観察と分解

中古のブレンボキャリパーへのお問合せで、「偽物ですか?」という質問は多々頂きます。

考えてみますと、それほど偽物が多く出回っているという証明なのかもしれません。

そこで少しでもお役に立てればと思いまして、ちょうど偽物ブレンボが装着されたバイクが

あったので分解してみました。

ぱっと見たところでは、コピー品には見えません。

本物とコピー品を見分ける一番簡単な方法は、ブリーダースクリューのサイズです。純正はボルトの二面幅のサイズは11ミリで、コピー品は10ミリです。もっともブリーダースクリューのネジピッチは両方共にM10のP1.0で、ブリーダースクリューの互換性はあるので交換されてしまうと分かりません。


リアキャリパーに用いられる、カニと云う名称のブレンボ純正2ポットキャリパーのピストンはアルミですが、

コピー品のピストンは鉄製です。ここでの判別が一番簡単かもしれません。(1970年代くらいのブレンボですと、

鉄製のピストンも存在していました。確かルマン2までは、そうだった記憶があります。今のラインナップ、

特に廉価版のキャリパーで、鉄ピストンが存在するのか否かは不明です)

ちなみに、このキャリパーはピストンが固着していまして、手では戻りませんでした。


ブレンボの純正品は、ピストンが嵌合する内側にもアルマイト処理がされています。コピー品はアルミの地肌のままです。コピー品は画像の通り、一部、地肌が腐植してキャリパーシールが内側に膨れ上がり、ピストンとシールの隙間が狭くなってピストンが動きませんでした。パットが装着される付近に、銀色のアルミ地肌と金色のアルマイト処理がされた箇所が線引きされています。これはマスキング処理の痕ですが、なにやら雑ですね。

アルマイトの際のマスキングが雑で、切削面のところどころにアルマイトが掛かっています。ピストンが嵌合する内部までアルマイト処理しますと、クリアランスの管理や精度にノウハウやコストが必要です。コピー品では出来ない領域なのでしょう。もしこの箇所までアルマイト処理されたコピー品ならたいしたものですが、そこまでの製品を造れるのならば、もうコピー品である必要はないでしょう。

このコピー品のキャリパーの価格はいくらのでしょうか?なんにせよ純正品とは比較にならないレベルです。このコピー品のキャリパーの、ダストシールとキャリパーシールが収まる溝の腐植は、それほどひどくありませんでした。それでもピストンは固着して動きません。コピー品の輸入、販売は当然違法です。誰がどのように、このような部品を輸入したのか不思議です。

追記

よくよく見ると、マスキング付近の被膜の厚みと、全体の色合いに違和感がありまして、これはアルマイトではなく塗装ではないかと剥離剤をかけてみたところ、下記の画像の通り色が剥げました。私はアルマイト処理に不案内ですが、ハードアルマイトは剥離座を用いてもアルミから剥げません。装飾アルマイトの事は不明です。おそらくコピー品のブレンボの着色は、アルマイトではなく塗装処理だと思われます。