バイクと心理的なもの 

人が「心地よい」「気持ちが良い」と感じる対象物は様々です。
バイクに乗っている人で、エンジンの振動を「心地よい」「気持ちが良い」
と感じる人が多くいます。 世間の一部の方は、これをキ○ガイとか
不気味とかキモイとか云いますが、 エンジンの振動が心地よいと思う人間からすると、
心地よさが分からない人は 鈍い人だと思うかもしれません。

名を忘失しましたが、高名な女性作家が洗濯機の振動が心地よいと
書いていた記憶がありますので、それほど特殊な事ではないのかもしれません。

以前、私はDUCATIの750F1のエンジン音を聞き、アクセルをひねって
その振動と 鼓動感に楽しくなりました。何か不思議と面白いのです。

色々と思案して これは90度エンジンの特性がそうさせたのだろうと
思いましたが、 私の愛車モトグッチのルマンⅢは、同じ90度エンジンですが
ここまで気分が 良くはなりません。昔乗っていたホンダVT250も似た形式の
エンジンですが、 気分は高揚しませんでした。 暫くしてから、
同じDUCATIの900SSという、750F1と排気量以外は似ている モデルに
触れる機会がありました。私は期待して750F1と同じように エンジンをかけて
アクセルを回しましたが、不思議なことに感動しませんでした。

暫くして、カジバ エレファント750というバイクが弊社に入庫しました。
エンジンを始動させると、私は妙に気分が良くなりました。
エレファント750のエンジンは750F1と似ています。この時、
私は このエンジンと非常に相性が良いと発見しました。 もっとも、
これは私だけではないのでしょう。750F1は相当昔に販売された車両ですが、
今でも 熱狂的なファンが多く支持されています。

私は750F1に不案内なので想像なのですが、 750F1のオーナーが信服している
理由のひとつは、このエンジンが持つ 鼓動感や振動なのではないかと想像しています。

私達は音楽に感動しますが、音楽には譜面がありますので乱暴に書きますと
記号や文字、数字に変換出来ます。日本人が好む音楽はマイナー調だそうですが、
曲を多くの人に売る為に、マイナー調にする作曲家もいるそうです。
エンジンも音楽と同じように、記号化、文字化、数字化出来たらと 考えると面白いですね。

或いは、メーカーは振動や周波数なんかを数値化し、 データーとして既に持っているかもしれません。 あと何年かして、「冷静になれるバイク」、「落ち込んだ時に乗ると元気になるバイク」 なんていうバイクが発売されたら愉快ですね。沈着250Rとか、高揚1000Fなんていう バイクが発売されたら、多分購入すると思います。

環境問題が厳しくなった昨今では、馬力を競う風潮はずいぶんと廃れたように思えます。 ホンダは確か、「この先100年のエンジンは、これまでの100年のエンジンとはまったく違ったものになる」と発言していた記憶があります。 かといって燃費と経済性だけでは味気がありません。冷蔵庫やエアコンと同じですね。 未来のエンジンは何を主張するのでしょうか。

ボア×ストロークや、シリンダーやクランクケースの肉厚による振動の相違、圧縮比や燃焼室の形状など、私はducatiの750ccのエンジンが、なぜ心地よく感じるのか非常に興味があります。いつの日か、このエンジンを持つ車体を入手して、 心地良く感じる理由を探そうと考えています。