私はモトグッチのルマンⅢというバイクを所有しています。
ルマンⅢのブレーキはちょっと変わっていまして、リアの
ブレーキペダルを踏むと、前輪の左側のキャリパーと
リアキャリパーが動作します。
このブレーキシステムは、インテグラルブレーキという名称です。
ホンダのブラックバードや近年のBMWも似たようなシステムを
採用していますが、もう40年くらい前にこのシステムを採用していたモトグッチは、先進性のあるメーカーだなと感心します。
はじめはこのブレーキシステムに慣れず、通常のバイクと同じ
システムにしたくなり解除しましたが、気まぐれに元に戻して乗り込むと、
ルマンⅢにはこのシステムが合っているなと実感し、標準に戻しました
何年か前、純正の鋳鉄ディスクから生じる汚れや錆に閉口し、ステンレス製のブレーキディスクに交換しました。
その後、心配性な私は、もう少しブレーキが効くと良いなと思い、フロントキャリパーをブレンボの4ポットに交換しました。
ブレーキは効くようになりましたが、インテグラルのフロント側の効きが強くなり過ぎました。
ブレーキのバランスが崩れて不満を覚えフロントのブレーキの制動力を弱めたくなりまして、
そこでもう少し効かないブレーキパットを探しました。
「効く」「コントロールしやすい」と宣伝しているメーカーは多いのですが、
「やや効かなくなる」と宣伝しているメーカーは皆無です。それはもっともで、
そんなブレーキパットを欲する人は少ないでしょう。
色々探した結果、とあるメーカーのブレーキパットが非常に好感触でした。
(このパットメーカーの名誉にかかわるので、メーカー名は秘します)
前述の通り、ブレーキペダルを踏みますと前後のブレーキが効きます。
ルマンⅢのアクセルは通常のバイクに比べ重いので、右手はアクセルワークだけに集中したくなります。
よってブレーキは殆ど足元のペダルで行います。私の感覚ですが、純正のブレーキペダルはちょっと硬く感じます。
これがフロントのキャリパーが2ポットから4ポットになった為、マスター/ピストン比が変わり、
ややスポンジーになりましたが、私は弱い入力で効果を得る方を好むので、好都合でした。
結果、ブレーキの製動力は強くなり、操作しやすく良いブレーキになりました。あとはリアの
ディスク径をやや大径化すればもっと良くなるのではないかと思案しています。
「良くなった」というのは私の主観ですから、ルマンⅢの純正のインテグラルを知っている方が
私にルマンⅢに乗れば、不満を覚えると思います。
とあるバイクショップの店主でルマン850のオーナーである大先輩は、以前、私がルマンⅢを改造しようと思い相談すると、
いつも「何でそんな事するの?」「やめた方が良いよ」と微笑していました。最近、ああなるほどなと実感しています。
純正の鋳鉄ディスクの汚れを我慢すれば、何の問題も無いと思います。
色々と不毛な改造をしていますが、行った改造にかかった手間と費用と効果を考えると、私が行った改造は、
非常に効率が悪いと言わざるを得ません。
私の拙く狭い経験ですが、BMWやモトグッチは、相当に改造が難しいバイクなのでしょう。
これらを改造して純正と同等以上に愉快なバイクに仕上げる方は、相当な技量の持ち主だと思います。
私は今まで色々と改造しましたが、その時は改造の結果、好転したように思えるのですが、
暫く乗り込むと、改造して何か失われた物、フィーリングとか感触と書くと曖昧なのですが、
私では数字や文字にするのが難しい何かが、改造すると悪化してしまうのです。
純正の状態である程度調子が良い時は、乗り終わったあとでも、「また乗りたい、もっと乗りたい」と、
不思議な感動があるのです。改造に失敗すると、この「また乗りたい、もっと乗りたい」という感動が大幅に失われます。
いったい何故なのかいつも不思議に思います。
弊社で部品取りになったBMWやモトグッチには、相当な改造車もありました。
おそらく、改造してSTDの美点を失い楽しさが減り、その後、売却したのかもしれません。
私は阿呆なので、それでも無駄と知りつつ改造したくて仕方がありません。
この先も改造(元に戻せる範囲ですが)するでしょう。要は改造前の状態と、その後の変化が好きなのだと思います。
歴史ある大メーカーのバイクを改造して、乗り味を良くする事は難しい事だと理解しています。それを良くする為には、
学問とか研究とか、相当な努力が必要なのでしょう。「作者は読者よりもよく知っている」と云いますが、
メーカーが使用者よりもよく知っているのは当然です。
私がルマンⅢから学んだ事の一つにスタンダードの素晴らしさがあります。私は改造して失敗し、
それから純正の素晴らしさを知りましたので、私の徒労は無駄では無かったとは思っています。
画像のバイクは性懲りも無く改造中の私のルマンⅢです。