ホンダ・MVアグスタ・ドゥカティ、バイクメーカーそれぞれの方向性

バイクを分解していると、メーカーは進化の方向が定まらず、この時期は迷走(?)していたのだろうかと思う車体に出会います。私に設計技術に関して書く資格はありませんので、いち中古部品屋が書く戯言と思って下さい。

バイクを分解していると、メーカーの目的に対する対処方法など、いろいろな事が学べて面白いものです。
ホンダは一時、スイングアームのピボット付近のフレームをメインフレームから切り離し、エンジンにスイングアーム装着用のフレームを装着していた時期があります。ホンダ CBR929RRやVTR1000Fなどがその例です。

HONDA CBR1000RR

先日HONDA CBR1000RRを分解しましたが、ピボット付近は通常のツインスパーに戻っていました。ホンダは、ピボットを切り離す方式を廃止したようです。なにか理由があるのでしょう。

今はもう廃れてしまいましたが、80年代には各メーカーでフロントフォークのアンチダイブが流行していました。技術の進化の道は一本道ではなく、蛇行、迷走しているのかもしれません。

MVアグスタ F4 1000驚きの固定方法

MVアグスタ エキゾーストパイプ

上の画像はMVアグスタ F4 1000のエキパイです。私はMVアグスタのエキパイを固定する方式に驚きました。多くのバイクは、エキパとフランジを2本のボルト、ナットで固定する方式です。昔の英車やBMWは、巨大なナットでエキパイを固定します。

過去にMVのような固定方法があったのかもしれませんが、MVの発想の自由さは凄いものです。私は4気筒のマフラーの脱着作業はめんどうなので嫌いですが、この方式ならば毎日、脱着しても良いとさえ思います。

MVアグスタ F4 1000 フランジ

MVアグスタ F4 1000 フランジ

上の画像がそのフランジです。
2本のエキパイの間にフランジが入り、1本のM8のスタッド、ナットで固定します。耐久性やボルトの破断、そういったリスクを考えれば、このフランジは思いついても製品化は出来ないと思います。

工学の知識に乏しい私ですら、このフランジ方式はありえなく、メーカーの仕事とは思えません。もっともこれは良い意味です。

MVアグスタ F4 1000 負圧取り出し口

MVアグスタ F4 1000 スロットルボディ 負圧取り出し口

画像の赤い丸で囲った箇所は、スロットルボディの同調をとるための負圧取り出し口です。もし、私はこの先、4気筒のバイクに乗る機会があれば、この方式を真似ようと思います。

MVアグスタ F4 1000 ハブダンパー

MVアグスタ F4 1000 ハブダンパー

上の画像はハブダンパーです。
MVアグスタ F4 750は(違っていたらすいません)、ゴムへの嵌合部はドゥカティや社外ホイールのように丸い形状だったと記憶しています。排気量が増大しダンパーの容量が不足したのしょうか、国産車と同じような形状に変化しました。

MV アグスタ F4 1000は確かドゥカティ 916を設計したタンブリーニ氏の設計だったと記憶しています。分解して感銘を受けたのは、整備性の良さ(弊社の場合は分解性の良さですが)です。それも分かりやすく簡単で悩みません。

タンブリーニならでは

以前、MVアグスタ F4 750を分解していると、何か分解しやすく、過去に分解したような錯覚を覚えました。後で調べると過去に分解した916と同じ設計者との事で、なるほどなと感心しました。

ドゥカティ 916iは非常に分解しやすいバイクで(851~888は初期のインジェクションなので部品点数が多く面倒です)、水冷、インジェクションの部品点数が多い当時のバイクにしては楽なものです。

タンブリーニ氏が優秀なのか、ドゥカティ社が偉いのか分かりませんが、分解する側の人間として、この姿勢は立派だと思います。

スズキのグース350などは例外ですが、わが国の4メーカーも、思い切って有能な設計者を招聘してバイクを開発しても良いのではないか?と思います。しかし実際は難しいのでしょう。国内4メーカーは巨大になり過ぎました。雇用している人数や関係者も桁外れですし、もう冒険するのは難しい時代なのでしょうか。