「ヒマラヤよりはウラヤマ(裏山)へ」とは、画家であり登山家でもあった、というよりは何者でもなかった、辻まこと氏の言葉です。
強い意志や目的を持つのは大事な事ですが、高山を目指してばかり生きると、ひたすら高地を目指し征服しに向かう人間になってしまいます。
上昇志向や勝ち負けに生きる事は大事なのでしょうが、裏山の味わいというのか、身辺の幸せを発見し実感して生きる事も等しく尊い事だと思います。
最近はいろいろと些事が多く、なかなか長距離のツーリングに行けません。遠くに行くと気分が高揚し新鮮な発見する事が多く楽しいのですが、そこに重きを置いて、まったくツーリングに行かなくなるのも何ですので、最近は近場を走って楽しんでいます。
うらぶれた施設の魅力
国道20号のとある区間に、営業しているのかどうか、なんとも分からないドライブインがありまして、いつも気になっていました。そこで今回、はじめて店の中の様子を伺いました。
店に入ると、奥には70才前後くらいでしょうか、女性が二人いました。空腹でしたので食事を注文し、昭和の遺物ともいえるドライブインで短い時間を過ごしました。
多くの観光客を呼ぶには、品揃え豊富な店や小奇麗な施設が必要です。ここ最近のサービスエリア、パーキングエリアや道の駅の充実は目をみはる物があります。
こういった新しい施設は確かにありがたいのですが、旅人からすると不便であったり、うらぶれた施設も味わいがあって良いものです。廃村、廃屋マニアや、利用者がいない秘境駅を好む方の気持ちをなんとなく理解できます。
昭和ドライブインの行く末
ツーリング先で、潰れたドライブインを何度も見かけます。庶民の海外旅行は夢であった1970年代以前は、国内の観光地やそこに行く道へのドライブインが多かったそうです。ここのドライブインもそうだったのでしょう。
私もよく利用し恩恵を受けているので何ですが、道の駅が多くのドライブインを廃業に追いやったのかもしれません。たいへん失礼なのですが、ここのドライブインの火が消える日は、そう遠くないように思えました。
稼働状態の昭和の遺物はまだまだ多く残っていますが、あと10年もすれば激減するのではないかと思っています。